- 「毎日くん」
「良い会社なのに伝わっていない」はなぜ起きるのか
目次
「ホームページを作り直したのに、問い合わせが増えない。」こういう言葉を、経営者の方からよく聞きます。伝わらない原因は品質の低さではなく、「強みが言語化されていない」という問題がほぼすべての場合に存在しています。この記事を読むと、伝わらないという現象が「努力不足」ではなく言語化以前の問題だとわかり、どこから手をつけるべきかが見えてくるはずです。
この記事でわかることは、主に以下の3つです。
- 品質と「伝わる」はまったく別のプロセスで動いている
- 「うちは普通のことしかしていない」という言葉が出る理由と、その中に何が隠れているか
- 「伝わらない」が起きる構造的な原因と、どこから変えられるか
良いものを作っているのに伝わらない、という現象
品質を上げても、伝わるかどうかは別の話です。
製品の精度を高める、サービスの完成度を上げる、そういった努力は確かに価値があります。ただ、読み手の脳の中で「この会社を選ぼう」という意味が生まれるかどうかは、品質の高さとは独立したプロセスで動いています。
どれだけ優れたものを持っていても、それが言葉にならなければ相手には届きません。そして多くの中小企業で起きていることは、「良いものを持っているが、言語化されていない」という状態です。
発信の問題ではなく、言語化以前の問題
「もっと発信すれば伝わるはず」と考えて、SNSを始めたり、ブログを増やしたりする会社があります。しかし、発信の材料そのものが言語化されていなければ、量を増やしても汎用的なコンテンツが積み上がるだけです。
発信量をどう増やすかではなく、「何を発信すべきか」が言語化されていないことが根本にあります。ほぼ例外なく、この問いへの答えがない状態でした。発信のスキルを磨く前に、発信の素材を言葉にするプロセスが必要です。
「うちは普通のことをしているだけです」という言葉が出るとき
産業機械メーカーのヒアリングをしたとき、担当者の方が最初にこう言いました。「うちは特に変わったことはしていません。普通のことしかしていないので、ネタがないんですよ。」
正直、最初はその言葉をそのまま受け取りかけました。しかし掘り下げていくと、まったく違う景色が見えてきました。
90年以上の製造実績に積み上がっていたもの
その会社は90年以上の製造実績を持つ会社でした。精度管理の細かさと、職人が長年かけて積み上げてきた暗黙知が強みだと、外から見ればすぐにわかります。ところが社内では、それが「当たり前のこと」として内面化されていました。
競合他社はカタログスペックで製品を訴求していました。数値・価格・納期の比較表。その中でこの会社だけが、顧客の「どんな条件で、何を基準に選べばいいか」という判断の入口から寄り添う提案をしていました。「お客さんが何で悩んでいるかから入るのは、当たり前のことでしょう」と担当者は言いましたが、競合がそうしていない以上、それは当たり前ではありません。
外から見ると明らかな差別化要因が、内側からは「普通のこと」に見えている。これが「うちは普通の会社です」という言葉の正体でした。
「伝わらない」が起きる3つの原因
この会社のヒアリングを経て、ココロバレが「伝わらない」という現象を整理してみると、3つの段階に分けられます。
自分が「普通」と感じているものが、競合との差になっている
一番の問題は、差別化要因として一番有効なものが「当たり前」として認識されているという点です。
長年やり続けてきたことは、自社の視点では「普通のこと」に見えます。しかし他社がやっていないのであれば、それは差です。「他社と比べて何が違うか」という視点の切り替えをしないと、最も価値のある部分が発信の材料として浮かび上がってきません。
言語化されていないから見えにくいだけで、内側の「当たり前」は外からは差別化の核に映ります。外部の視点が加わったとき、「普通」という認識は一転して差別化要因の発見になります。
「強みを伝えたい」という意欲があっても、言語化のプロセスがない
「伝えたい」という気持ちはどの会社にもあります。ただ、「では何を伝えるか」を言語化するプロセスが設計されていないと、意欲は空回りします。
一次情報というのは、経営者や現場の方の脳の中にあります。それをヒアリングで引き出して、言葉にして、記事やコンテンツという形にする。そのプロセスが存在しない限り、「伝えたい気持ち」は発信の量にはなっても、相手に届くコンテンツにはなりません。
発信の量を増やすだけでは、材料の問題は解決しない
「もっとブログを書けば解決する」「SNSを増やせばいい」という発想は、材料の問題と発信の問題を混同しています。
言語化されていない強みをもとにどれだけコンテンツを増やしても、同じ汎用的な内容の繰り返しになります。読み手にとって「この会社でないといけない理由」が生まれないまま、情報量だけが増えていく状態です。
産業機械メーカーの場合、「毎日くん」(ココロバレが提供するLLMO対応ブログ運用代行サービス)でヒアリングして一次情報を引き出した結果、導入から3週間で検索圏外から2位になりました。ただしこの数字は、一次情報の質とキーワードの競争状況によって変わります。重要なのは「何を書いたか」ではなく、「言語化されていなかった強みが記事の素材になった」という事実です。
AI検索が引用する記事も同じ原理で動いています。AIが参照するのは固有の情報を持つ記事であり、汎用的な解説を量産しても引用される確率は上がりません。言語化されていなかった強みが記事の素材になったとき、はじめてその会社にしか語れないコンテンツが生まれます。
まとめ
「伝わらない」問題の本質は、品質の低さにあるのではありません。長年積み上がってきた「当たり前」が、まだ言葉になっていない。それだけのことです。
ヒアリングで「うちは普通のことしかしていません」という言葉が出たとき、そこが一番深く掘り下げるべき場所です。普通だと思っているものの中に、外から見ると差別化要因になっているものが、ほぼ必ずあります。
言語化が先、発信はその後です。何を発信するかの素材が整っていない状態で量を増やしても、汎用的なコンテンツが積み上がるだけです。言語化できた素材が積み重なるとき、はじめて読み手の記憶に残るコンテンツが生まれます。
努力でなんとかしようとする前に、まずそれを言葉にすることが先です。
よくある質問
Q. 「伝わっていない」状態を抜け出すには、何から始めればいいですか
まず、自社の担当者が「当たり前」として話す内容を書き出してみてください。「競合他社はこれをやっていないが、うちはやっている」という視点で見ると、言語化する素材が浮かびやすくなります。発信を増やす前に、発信の材料を言葉にするプロセスを先につくるのが順序として正しい考え方です。
Q. 強みが「当たり前」になっている状態は、自社だけで解消できますか
完全に自社だけで解消するのは難しいことが多いです。内側にいる人間には、外部との比較が見えにくいためです。社内で「競合他社と比べてどう違うか」を会議で話し合ってみることが有効ですが、外部の視点を入れてヒアリングで引き出す方が、言語化の精度は上がります。気づいていない強みは、外から問われて初めて言葉になることがほとんどです。
Q. 「一次情報を言語化する」とは、具体的にどういうことですか
一次情報とは、その会社にしか語れない経験・判断・事例のことです。言語化とは、それをヒアリングで引き出して文章の素材にするプロセスです。例えば「なぜその提案をするか」「どういう判断基準で設計しているか」といった問いに答えていくと、他社がコピーできないコンテンツの素材が出てきます。この素材があるかどうかが、発信の効果の差につながります。
この記事を書いた人
藤原紗千代
株式会社ココロバレ 代表取締役/ブランド戦略デザイナー
マスコミ系制作会社で鍛えたデザイン力とディレクション力を土台に、渡米してマーケティングを学ぶ。帰国後、「伝わらないを晴らす」を掲げて株式会社ココロバレを設立。デザイン経営を軸に、企業の“強み”を“伝わる形”へと変換し、成果につなげる戦略設計を行っている。
支援実績は、開業初月で月商100万円を達成した1人整体院から、年商90億円規模のエコ企業まで多岐にわたる。デザインと経営の両視点からブランドの本質を引き出し、「伝わるデザイン」で企業価値を高めることを得意とする。